鯉川酒造株式会社

鯉川酒造株式会社 庄内の純米酒

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『水音に歌う ― 佐藤一良と鯉の夢 ―』山形県庄内、余目の空に雪が舞っていた。300年という時の重みは、木造の酒蔵にしんしんと染み込んでいた。鯉川酒造が初めて米を蒸し、水を汲み、麹を起こしたあの日から、何世代もの手が命をつないできた。そして...
03/08/2025

『水音に歌う ― 佐藤一良と鯉の夢 ―』

山形県庄内、余目の空に雪が舞っていた。

300年という時の重みは、木造の酒蔵にしんしんと染み込んでいた。鯉川酒造が初めて米を蒸し、水を汲み、麹を起こしたあの日から、何世代もの手が命をつないできた。そしてその手は今、佐藤一良の手の中にあった。

だが彼の指は、酒を仕込むだけのものではない。
静かな蔵の奥、かつて祖父が使っていた帳場の一室には、グランドピアノが置かれていた。夜になると、一良はそこに座り、鍵盤に指を置く。音が鳴る。低く、深く、まるで発酵中の酒が語るような音だった。

「この音は、米の心だな」

彼は小さく呟いた。

一良は若い頃、音楽の道に身を置いた。東京のライブハウス、ニューヨークの地下鉄、パリの広場。ピアノの前に座れば、人の言葉も国境も超えていった。だが、ある日ふと帰郷したとき、老いた父が仕込み水を汲む姿を見た。真冬の川に素手を入れ、静かに祈るようにして。

「うちの酒は、歌と似てるんだ。一音でも乱れたら、すべてが崩れる」

その言葉に胸が打たれた。

それから彼は、鯉川の四代目として生きる道を選んだ。そして今、酒蔵は創業三百年の節目を迎えていた。

記念の夜、彼は蔵を開き、音楽会を開いた。発酵香が漂う中、地元の人々、遠くからのファン、杜氏たち、そして音楽仲間が集まった。灯りを落とした蔵で、彼はピアノの前に立つ。

「この酒は、音でできている」

彼はマイク越しにそう言った。

「雪の音、川の音、米がふくらむ音、人が笑う音。そして、祈るように育てた音。それを、今日はピアノで弾きます」

静寂の中、彼の指が音を紡いだ。
酒が発酵する温もり、雪が屋根を叩くリズム、蔵人たちの息遣い、そして母が幼い彼を寝かしつける時に口ずさんだ子守唄――。

それは「音楽」であり「鯉川」であり「一良」そのものだった。

終曲のあと、誰からともなく拍手が起こった。
それは、300年の歴史への拍手であり、今この時代に、蔵とともに生きる音楽家・佐藤一良への讃歌だった。

その夜、仕込み水の川からは、まるで鯉が跳ねたような水音が聞こえたという。

住所

山形県東田川郡庄内町余目字 興野42
Yamagata, Gifu
999-7781

電話番号

+81234432005

ウェブサイト

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